Saxin ニューライト®とは
当社は西独で開発された超高分子量ポリエチレンに逸早く着目し、その成形加工及び、用途開発に着手し、Saxinニューライト®として、1962年に発表いたしました。
以来専業加工メーカーとして次々と新しい領域に応用分野を開拓する一方、業界の先端を切って数多くの成形技術を開発し、そこから生まれる信頼性の高い豊富な製品群は、日本国内で一位の取扱量はもとより、世界でも類のない存在となっております。それはまさに、超高分子量ポリエチレンの今日を築き上げた「パイオニア」と言っても過言ではありません。
Saxinニューライト®は、その巨大な分子量に起因する優れた物性により、今や、食品、搬送業界の摺動部材として又、粉粒体を取り扱う箇所の壁面材料として、必要不可欠な材料となっています。加えて、最近各産業分野で脚光を浴びているTPM(トータルプロダクティビティメンテナンス)材料としても注目、活用されています。
特徴
1. 耐衝撃性 | アイゾット衝撃強度(ノッチ付)試験でも破断しません。 |
2. 耐摩耗性 | 銅・鉋金・鋼・ステンレス上での摩耗性が極めて低く、他のエンジニアリングプラスチックと比較しても著しく優れており、加えて相手材保護性を有しています。 |
3. 自己潤滑性 | 摩擦係数は0.15(乾式)で銅や真鍮に潤滑油を使用した場合より、よく滑ります。また、無潤滑・油潤滑のいずれにおいても優れ、フッ素樹脂とほぼ同等の動摩擦係数を示します。 |
4. 耐薬品性 | 酸・アルカリ・有機薬品に対し高い安定性を示します。 (但し、濃硫酸、濃塩酸、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素を除く) |
5. 低温特性 | 極低温時でも高い衝撃強度や耐摩耗性を持続します。 |
6. 衛生性 | 食品分野での利用が可能です。 (一部食品分野に適合しないグレードもあります。) |
7. その他 | 非粘着性・エネルギー吸収性・耐ストレスクラック性・非吸湿性・耐候性・電機特性等、多くの優れた特性を持っています。 |
一般物性
Saxin ニューライト®の表面はパラフィン状で、非常に滑らかです。
分子構造はエチレンを直鎖状に重合した(CH2-CH2)nの構造ですが、その重合度nは高密度のポリエチレンの約10倍であり、極めて長い直鎖状高分子構造となっています。 またその非常に高い分子量により、熔融時の流動挙動は殆ど無く、高粘弾性体で、通常のメルトインデックス測定法では測定不可能です。
その為、熔融時においても非荷重下ではSaxin ニューライト®はほぼその原型を保持します。
機械的特質
Saxin ニューライト®の重要な特質の一つは衝撃強度が極めて高いということで、極低温においてもこの特質が維持されます。従って標準のノッチ付アイゾット衝撃試験では試験片は破壊されにくく、このため衝撃値は試験片に更に鋭角溝を設けた特殊法により強制破壊させて測定を行います。
下記のグラフは分子量と衝撃強度の関係で分子量の増加に伴い衝撃強度が向上する事を示しています。
熱的性質
Saxin ニューライト®の「耐熱性」は、高温・低温、共に高密度ポリエチレンより優れており、使用方法にもよりますが、80℃付近までは諸物性を損なわず使用できます。
前掲下図に示す如く、120℃という高温下の引張試験値を見るとその値は3.5~3.9MPa、真破断応用力は19.6~24.5MPaと極めて高い値を示します。
Saxin ニューライト®の引張応力歪み曲線格
下図は、温度の違いによる特殊鋭角ノッチ付き 衝撃強度を通常の高密度ポリエチレンとの比較を行いました。この図から低温状態においても他材に見られない優秀な衝撃強度を有し、低温分野の用途に非常に適している事が解ります。
滑性
テストピースリング状、相手材45C、2~2.5μm仕上げ
摩耗性
滑り特性に加えるにそれぞれの方法による比較摩耗試験のデータは、Saxin ニューライト®が他の合成樹脂或いは他材に比して摩耗率が極めて低いということを示している。また樹脂製品で摩耗率が問題となるのは多くの場合鋼、黄銅製品との非潤滑摺動面の耐久性についてであるが、この点、Saxin ニューライト®はこれら金属を対象とした場合でも摩耗率が極めて低いというデータが得られている。
例えば、圧力0.5MPa、速さ1.5m/s、温度30℃、鋼上の場合で0.8mg/24時間に過ぎず、この値は4弗化エチレンよりはるかにすぐれ、6ナイロンの1/5という驚異的低さであり、しかも相手材の摩耗を防止する。
※サンドスラリー法による各種材料との摩耗比較値は、「各種樹脂との比較」ページで参照できます。
耐薬品性
高温下で若干の強酸に僅か侵されるほか、殆どの酸、アルカリ、溶剤に対して高い耐薬品性を示し、一般の高密度ポリエチレンでは使用出来ない条件下でも安定した物性を保持することが可能です。
試験片 短形(ダンベル型) 試験期間 30日間
○=安定、全く変化なし
△=比較的安定、引張強さ、及び真破断力が20%以内減少
×=不安定、引張強さ及び真破断力20%以上減少したもの
試薬 | 20℃ | 50℃ | 80℃ |
---|---|---|---|
1.無機酸 | |||
クローム酸(80%) | ○ | ○ | △ |
塩化水素酸 | ○ | ○ | ○ |
シアン化水素 | ○ | ○ | |
弗化水素酸 | ○ | ○ | |
濃硝酸 | △ | △ | × |
硝酸(50%) | △ | △ | × |
硝酸(20%) | ○ | ○ | △ |
燐酸(85%) | ○ | ○ | ○ |
濃硫酸 | ○ | △ | × |
硫酸(75%) | ○ | △ | △ |
硫酸(50%) | ○ | ○ | ○ |
2.アルカリ | |||
アンモニア水 | ○ | ○ | |
苛性カリ | ○ | ○ | ○ |
苛性ソーダ | ○ | ○ | ○ |
3.無機塩水溶液 | |||
塩化アンモニウム | ○ | ○ | ○ |
硝酸アンモン | ○ | ○ | ○ |
漂白粉 | ○ | ○ | ○ |
塩化カルシュウム | ○ | ○ | ○ |
炭酸ソーダ | ○ | ○ | ○ |
次亜塩素酸ソーダ | ○ | ○ | ○ |
硫酸ソーダ | ○ | ○ | ○ |
塩化亜鉛 | ○ | ○ | ○ |
4.有機酸 | |||
酢酸(99%) | ○ | ○ | △ |
酢酸(10%) | ○ | ○ | ○ |
酪酸 | ○ | ○ | |
クエン酸 | ○ | ○ | ○ |
蟻酸 | ○ | ○ | |
オレイン酸 | ○ | ○ | △ |
試薬 | 20℃ | 50℃ | 80℃ |
---|---|---|---|
5.炭化水素及び、塩素化炭化水素 | |||
ベンジン | △ | △ | |
四塩化炭素 | △ | ||
シクロヘキサン | ○ | ○ | |
ヂクロールエチレン | △ | △ | |
ディーゼル油 | ○ | ○ | △ |
n-ヘプタン | ○ | ○ | |
石油エーテル | ○ | ||
トリクロールエチレン | △ | × | |
トルエン | △ | × | |
キシレン | △ | △ | × |
6.アルコール、ケトン、エステル、アミン | |||
アセトン | ○ | ○ | |
アニリン | ○ | ○ | △ |
ベンジールアルコール | ○ | ○ | ○ |
ブチルアルコール | ○ | ○ | ○ |
シクロヘキサノール | ○ | ○ | ○ |
エタノール | ○ | ○ | |
エチルアセテート | ○ | ○ | |
エチレングリコール | ○ | ○ | ○ |
グリセリン | ○ | ○ | ○ |
ラウリルアルコール | ○ | ○ | ○ |
プロピルアルコール | ○ | ○ | ○ |
7.その他 | |||
ビール | ○ | ○ | ○ |
洗剤水溶性 | ○ | ○ | ○ |
蒸留水 | ○ | ○ | ○ |
亜麻仁油 | ○ | ○ | ○ |
過酸化水素水(30%) | ○ | ○ | |
牛乳 | ○ | ○ | ○ |
オリーブ油 | ○ | ○ | ○ |
海水 | ○ | ○ | ○ |
ワイン | ○ | ○ | ○ |
尚、実際のご使用に当たりましては上記資料を参照の上、サンプル片等でテストを頂きます様、お願い致します。
電気的性質
Saxin ニューライト®は優れた機械的特性に加え、卓越した電気的性質を有しています。しかもこの特性は極めて広汎な周波数及び温度範囲に亘り維持され、また吸水性を有しない為、高湿においても変化しません。
性質 | 試験法 | 単位 | NL-W | NL-AS(B) |
---|---|---|---|---|
体積抵抗率 | ASTM D257 | Ω/□ | 約1017 | 約104 |
誘電率 | ASTM D150 | -- | 2.3 | 2.4 |
誘電体力率(69~106Hz) | ASTM D150 | -- | <2×10-4 | <1×10-3 |
絶縁耐力 | ASTM D149 | kV/mm | 50 | -- |